礒谷幸始

Yukiharu Isoya 株式会社リード・イノベーション 代表取締役
礒谷幸始

イノベーションは、
「当たり前のことを、当たり前にすること」
から生まれる

アメリカンフットボール選手として、チームを「日本一」に導いたキャプテンは、現在、ビジネスの世界へとフィールドを変え、「史上最高のチームづくり」に挑戦している。「人」と「組織」という切り口で、クライアントのビジネスにインパクトを起こす。それが礒谷氏のミッションだ。

Profile

礒谷幸始 株式会社リード・イノベーション 代表取締役

1981年、千葉県生まれ。立命館大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、キャプテンとしてチームを大学史上初の日本一に導く。大学卒業後の2003年、日本IBMに入社。セールスマネージャーとしてマネジメントを学びながら、社会人アメフトXリーグ「IBM Big Blue」のキャプテンを務める。その後、エンターテインメント企業、東証一部上場飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを歴任。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任する。

幼少期から培ってきたキャプテン気質

水泳、サッカー、アメフトと、私は幼少期からスポーツ漬けで、しかも、小・中・高・大学、社会人と、所属するすべてのチームでキャプテンを務めてきました。父も、母も、兄も、アスリートだったスポーツ一家。しかも全員がキャプテン経験者でしたから、私も幼いころから、自然と「キャプテンはこうあるべき」というキャプテンシーを刷り込まれていたのかもしれません(笑)。目立ちたがり屋のうえ、カラダも態度も大きくて(笑)、生まれながらキャプテン気質だったのでしょうね。

小学生のときは、週5日水泳。中学に入学してからはサッカーにはまり、「2002年日韓ワールドカップ」に出る気満々でした。「チームづくり」の難しさを初めて学んだのも、中学時代です。キャプテンとしてチームをまとめるつもりが、反対に、真っ二つにしてしまったのです。チーム内に「真面目」vs「不良」という構図が生まれ、互いに反目し合っていました。私は、不良部員の不真面目な態度が許せなかった。けれど今にして思うと、頑なで強引だった私の姿勢が、チーム内の雰囲気を悪くしていたのかもしれません。「県大会ベスト8」とそれなりの結果を残したものの、達成感はありませんでした。私が「自分の考え」を押し付けなければ、私に空気を読む力があれば、チームは一つにまとまり、さらに上の成績を残せたはずです。アメリカンフットボールをはじめたのは、高校に入ってからです。最初は、高校でもサッカーに打ち込むつもりでした。ところが、私の期待はすぐに裏切られました。仮入部初日にグラウンドに出てみると、練習開始時間を過ぎているのに、誰もいない。20分くらい過ぎてからダラダラと集まってきた先輩たちを見て、「なんだよ、こいつら」と呆れた私は、その場で高校サッカーに見切りをつけました(笑)。そして、友人に誘われるまま、「アメリカンフットボール部」に入部することになったのです。

チームをアメフト日本一に導いた「3つ」の理由

スポーツ推薦で立命館大学に入学してからは、「立命館大学パンサーズ(アメフト部)」のランニングバックとしてレギュラー出場を続け、4回生のときキャプテンに就任しました。私がチームに示した目標は、「過去最大の得失点差をつけて、ライバルである関学(関西学院大学)をボコボコにする」です。結果的に、立命館大学は関学を「48−14」で破り、関西学生リーグで優勝。関学の48失点は創部以来の最多失点であり、「得点差34点」もリーグ戦最多得点差という記録的な大敗でした。

私がキャプテンとして有言実行できた理由は、主に3つあると思います。

① 共感できる目標を設定する
「共感できる明確な目標」を設定すると、組織力は上がります。「過去3年間負け続けていた関学をボコボコにする」「ボコボコの定義は、過去最大の得失点差をつけることである」という明確なゴールを設定したことで、選手たちが目標への所有感を持つことができたと思います。

② 当たり前のことを徹底する
どうして立命館大学は、関学に3連敗したのか。その原因を徹底分析した結果、「当たり前のことができていない」ことに気がつきました。立命館大学は選手のレベルが高く、コーチ陣も力があり、テクニックもフィジカル面も優れている。それなのに勝てないのは、「私生活などの些細な行動が、試合の結果に表われていたから」です。そこで、「馴れ合わず、節度を持った上下関係を築く」「トイレのスリッパをきれいに並べる」「トレーニング終了後、ウェイトルームを片づける」といった当たり前のことを徹底しました。

私が代表を務める株式会社リード・イノベーションの使命は、「イノベーションを先導する存在になる」(LEAD INNOVATION=イノベーションを先導する)ことです。一般的に、イノベーションは、「革新」「変革」と訳されます。しかし、イノベーションは、「当たり前のことを、当たり前にすること」から生まれるのです。

③ 素晴らしい仲間と新しい文化を創る
立命館大学アメフト部は、運動能力の高い様々な競技をしている高校生を全国からリクルーティングしていました。入部してきた選手たちは動物のようで、付いたあだ名は“アニマル・リッツ”(チーム名はパンサーズ、立命館の愛称のRitsに由来)。様々な動物がいる中で、私達幹部がすることは、新しい文化を創ることでした。有言実行すること、できていないことを躊躇なくフィードバックすること、そして、仲間に感謝の言葉をかけること。それらを繰り返し発言し、体現しました。

キャプテンに就任したとき、前十字靭帯断裂などのケガで私はリハビリ期間中でした。ある日、ラントレーニングをしていない私がラントレーニング後ダラダラしていた後輩にそれを指摘すると、「いっそん(当時のあだ名)走ってから言ってくださいよ」と言われて頭にきたのをいまだに覚えています。私にできるのはベンチプレスだけでしたが、「だったら、チームの誰よりも上半身を鍛えてやろう」と意気込み、そのおかげで「体重82kgでベンチプレス160kg」を記録し、「チーム1のムキムキ」になりました(笑)。
2002年には、関学を破って関西学生リーグ優勝。その後、関東学生リーグの覇者、早稲田大学との全日本選手権(甲子園ボウル)も制して、立命館大学は大学日本一になりました。さらに、その年のライスボウル(日本選手権)では、社会人チャンピオンチーム、オービックシーガルス(当時は、リクルートシーガルス)に勝利し、立命館大学史上初の日本一を達成したのです。大学卒業後に就職した株式会社日本IBMでも、私はアメフト部のキャプテンを務めました。入部1年目は「全敗」で、1部リーグ入れ替え戦出場という惨憺たるシーズンでしたが、チームは少しずつ成長を遂げ、3年後には同率1位ながらリーグ優勝を果たすことができました。こうした、アメフトでの「キャプテン経験」が土台となって、人財育成、人財開発に関する私の思考やビジネスマインドが培われたのです。

自己成長のためなら、喜んで「荒波」に舵を切る

2008年シーズンをもって、アメフトを引退。同時に、6年半在籍した日本IBMを退社し、エンターテインメント企業に転職しました。
日本 IBM に在籍していたときから、「人や組織を成長させること」に興味を持っており、人事マネジャーに転職。新卒採用の仕組みづくり、採用教育全領域のマネージメント、「AKB オフィシャルカフェショップ」の立ち上げや沖縄障碍者センターの設立など、スタートアップ系事業にも従事しました。
2013年には、東証1部上場飲食チェーン企業に移り、Human Capital Management 部門のGMとして、人気企業化に貢献しました。

当時は、パチンコ業も飲食業も学生の関心度が低く、新卒採用は苦戦を強いられました。けれど私は、アメフトで日本一になった経験から、「困難が人を成長させる」ことを知っています。
凪(な)いだ海と荒れた海があれば、私は迷うことなく、荒れた海に舵を切ります。私が現在、「人・組織・チームのコンサルタント」として評価をいただけているのも、困難の中に自ら飛び込んで、知恵を絞り、汗をかいて、採用活動を成功させた実績があるからです。

経営に、唯一絶対の正解は存在しない

独立して「株式会社リード・イノベーション」を立ち上げたのは、2015年11月です。

弊社サービスは事業成長と組織開発が主戦場です。その中でも営業企画と人事領域で組織に流れを生むBLAST(突風という意味)というサービスがあります。ゲームには勝敗を左右するモメンタム(流れ)があります。経営にも同様にモメンタムがあると思っています。弊社は経営にモメンタムを仕掛けるプロ集団であり続けます。

現在の私には、2つの立場があります。「コーチ」としての立場と、「経営者」としての立場です。
コーチとしては、「人や組織に外部刺激を提供し、経営者を勝利に導く」ことが私の役割です。

私は「経営に唯一の正解はない」と考えています。一時期、私のコーチングは、「クライアントの利益を上げること」だけにフォーカスしていたことがありました。「経営者が望んでいるのは、会社の数字を上げることに尽きる」と勝手に決めつけていたのです。
私の思い違いを正してくれたのが、『奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ』の著者であり、セムコ社(ブラジル)CEO、リカルド・セムラー氏です。

「すごい会議」(コーチングをベースにアメリカで開発された会議の方法論)が主催した「リカルド・セムラー初来日ワークセッション」において、彼はこう発言しました。
「自然界を見渡してみても、成長し続けている生き物は存在しない。ガン細胞でさえ、最後は宿主である人間を蝕(むしば)み死に至らしめることで、自らの成長を滅ぼしてしまう。だから会社はつぶれる」。聞いたときは衝撃を受けました。

要するに、「成長がすべてではない」ということです。成長してもいいし、しなくてもいい。利益を重視してもいいし、しなくてもいい。社長の数だけ正解があり、百人百様でいい。したがって現在の私は、
・「意思決定者である社長が、どういう世界を手に入れようとしているのか」
・「その世界を手に入れるために、困っていることは何か」
・「どういうチームでそれを成し遂げたいのか」
をクライアントとともに考えていくためのコーチングに注力しています。まずは社長の志を明確化し、事業上の問題と組織上の問題を棚卸しして、プロジェクトをデザインしているのです。

メンバー一人ひとりが「経営者と同じ目線」を持つ

経営者としては、リード・イノベーションを「自由経営」という名のティール組織(「自主経営」「全体性」「存在目的」の3つの支柱により成り立つ組織形態)へと変革させています。そして、メンバー一人ひとりが「経営者と同じ目線」で思考、行動し、マネジメントし、コミュニケーションをする集団を目指しています。
当社に「出社義務がない」のも、「服装や通勤方法、休み方が自由」なのも、「給与が交渉制」なのも、セルフマネジメント(自主経営)が機能する組織運営にチャレンジしているからです。
こうした「自走型経営」を実現できれば、企業に依存する従来型の雇用形態ではなく、「各自のライフスタイル・ワークスタイルを尊重した働き方」が可能になるはずです。

今後進めていくことは、アスリート出身者で若い後輩達を、BLASTメンバーとして受け入れ、現役時代以上にビジネスの世界で燃えられる環境を用意すること。
令和で一番クライアントと熱狂できる会社を創ることです。第1号として、大学アメフトの後輩の北村優氏「現役スポーツ選手の僕がリード・イノベーションを選んだ理由」(株式会社リードイノベーション シニアマネージャー北村優)は、現在オービックシーガルズの現役選手でありながら、リード・イノベーションで活躍中です。
また、何名かの元アスリートが弊社にjoinして参ります。僕らの史上最高のチームはどんなチームになのか?今から楽しみです。
これからも「すべてのチームを史上最高に」をミッションに、人、組織に関するブレイクスルーの研究と実践を続けて、よりクライアントに新たな価値を提供し続けます。

Message

礒谷幸始

『類は友を呼ぶ』類似したタイプは磁石のようにお互いを繋ぎ合わせる。ニューヨークで育った杉山大輔さんは、私が言うのもなんですが本当にキャラが濃い方です。そして、その人柄からキャスティングがすごいです。互いの仕事の話を重ねている時に一瞬で打ち解けました。
ある日、弊社のサービスである経営にモメンタム(流れ)を起こすサービスBLASTができた時「礒谷さん!まさに経営にBLASTですね!!」っておっしゃっていただいた時、あまりに発音がかっこよすぎて弊社で真似が流行ってます。大輔会という”ダイスケ”だけがあつまる経営者会で弊社のDAISUKEも可愛がっていただいており、DAISUKE共々、引き続きパートナーシップをよろしくお願いします。

株式会社リード・イノベーション 代表取締役 礒谷幸始
Interview and Editor : Daisuke Sugiyama | Text: Yutaka Fujiyoshi | Photography: Masaaki Miyazawa
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岡田 吾一 Goichi Okada プルデンシャル生命保険株式会社 営業所長
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